神出鬼没・・・
20年くらい前ですかね。まあ、この稼業をしてますと中々一つの楽器会社の専任で調律師としてやっていくのは、人様が思うほど楽ではない・・・だから当時は今よりも多く、数社と契約していた時期がありました。まあベテラン調律師の数が少なかったとゆうのもあったのですが。
「調律師さんね・・・来年からね、うち来なくていいよ。貴方には長年お世話になったけどね、甥っ子が調律師になったんだ
からしょうがないよ」と横町の〇〇さん・・・
「ギョギョまたそんなご冗談仰って。そんなご無体なこと仰らないで末永く来年からもよろしくお願いしますよ、ご隠居さん!」・・・
これは永く調律師してると極たまにあることで・・・まぁ、お客様と調律師の相性が合わない。しょうがないんです。お互い人間同士なんだから・・・で、そんなこんなで、こちらも忙しい1年の月日が流れまして・・・
私が契約している、ある楽器店に調律依頼の電話がかかって来た。
「横町の○○と申します。初めてなんですけど調律をお願いします」
何気なくその電話が私の耳に聞こえた。
「なに?今の電話、と横町の○○ですって言ったよね。そのお客さん、毎年行ってるからよく知ってる。是非私にやらせて!」
・・・やっぱり甥御さんが調律師になったなんて嘘だったんだ。私は面白いことになるなと思い、調律日時のピント合わせを
別の人にお願いした。
「ピンポーン・・・○○楽器ですが、調律にお伺いいたしました」
出迎えてくれたのは、くだんのご隠居。
「ギョギョギョ!お主は毎年来てくれる調律師ではないか」
「そうです、私が何を隠そう毎年お伺いしている調律師の○○めにございます。この地域は半径20㎞以内何処の楽器店に調律依頼の電話をおかけになられても、いやでも私めが参上いたす、お客様の運命となっております」
・・・ジャンジャン。
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